江戸っ子らしい食べ物と言えば、蕎麦に寿司。どちらも気の短い江戸っ子向きの、さっさと食べられてしかも旨い、という食べ物だ。その寿司、正確に言えば江戸前のにぎり寿司は、実は両国生まれなのである。
時は文政の始め頃というから、1820年前後のこと。今でこそ寿司といえばにぎり寿司を指すが、当時は大阪風の押し寿司しかなく、これは注文してできあがるまで3〜4時間もかかったそうだ。それを一口サイズにして握り、様々なネタを乗せたのが、両国横綱町の裏長屋に住んでいた与兵衛という人。これがにぎり寿司の元祖と言われている。
この斬新な発想は、大当たりした。与兵衛は睡眠時間4時間ほどで、毎日歯を食いしばって握っても握っても、とても注文に追いつかなかったそうだ。
与兵衛寿司の店は、昭和の5〜6年頃まで両国にあったそうだが、その後廃業。「元祖にぎり寿司」の味は、今では想像するしかない。どんな味だったのだろう。
かくして、両国は今も味自慢の店が揃い、ハズレが少ない。あなたの舌でご確認を。
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