世界で唯一(?)の「すもうまんが家」、琴剣淳弥さんの相撲界の裏話
琴剣さんは、自身の経験を元に、相撲界で頑張る若い力士や呼び出しさんたちの生活を、生き生きとマンガにしている。マンガの面白さもさることながら、端々に登場する相撲界に伝わる知恵や慣習の数々も、相撲ファンにとっては興味深いものだ。
「稽古でおでこを切ることなんてしょっちゅうでしょ?縫うと痕が残っちゃうから、相撲取りは卵のカラの内側についてる薄い膜、あれを傷口に張るんです。5日もすると、跡形もなく治っちゃうんですよ。あと、ひざをすりむいたりすると、パッと塩をかけちゃう」。
聞いただけで痛そうである。
「死ぬほどシミますよ(笑)。でも塩には殺菌作用があるから、傷も早く治るんですよ。
それから冬なんか、足の裏がヒビだらけになってね。ぱっくり割れちゃったときなんか、瞬間接着剤でミゾを埋めたりします」。
うわぁ。良い子は決して真似をしてはいけない治療法である。
「そういう治し方とか、ちゃんこの作り方なんかも、先輩から後輩へ、代々受け継がれていくんです。中学を出てすぐに入門する子が多いですから、ほんと、学校です。いや、それ以上かな。暴走族でどうしようもない暴れん坊だった子が、1年後には母校に行って校長先生に挨拶して、先生のほうがあっけにとられたりね」。
ご自身は「勝負に向かない性格だった」そうだが、強くなる力士には共通項があると言う。
「なぜか自分で志願して入門したヤツは、伸びないんですよ。華やかな面ばかりイメージしてるからですかね。強くなるのは、ありきたりだけど、コツコツと地道な稽古を嫌がらない者。舞の海関なんか、他人が稽古してる時も力士の足の動きをにらむように見てます。ぼくは後から入ってきた琴錦関とか琴の若なんかの先生役だったんだけど、すぐに番付で抜かれちゃって。あ、オレはだめだと思いましたね。ただ、抜いても抜かれても、いつまでもいい仲間なんですよ。正直、兄弟以上の関係ですね」。
スポットを浴びる大相撲本場所の裏には、たくさんの汗と涙と友情があるのであった。
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